Youの時代
-個人がメディア化する時代、クリエータとしての住民と消費者

You, the consumer as creator
- Top of the 50 people who matter now

アメリカの雑誌「Business2.0 Magazine」誌は、2006年6月の記事「The 50 people who matter now (今最も重要な50人)」の中で「You (The consumer as creator)、クリエータとしての消費者、あなた」を最も重要な人として挙げています。

いま、消費者・住民は、単なる商品やサービスを受容する受身的な存在ではなく、自分の経験・体験、意見・主張をブログ、SNS、YouTubeなどのCGM(Consumer Generated Media)を通じて、主体的に情報を発信し、互いのコミュニケーションを図り、ネットワークを構築し、新しい潮流を作り出す「クリエータ」として、評価されています。

それぞれの個人がメディア化する時代です。

また多くの住民や消費者は、マスコミの情報を頼るのではなく、自ら情報を探索しCGM(Consumer Generated Media)をより信頼しています。


You - Person of the Year 2006

Time誌の2006年12月25号は、「Person of the Year」として、誰かの有名人や偉人を選ばずに、「You」を選びました。すなわち、一般の大衆の私たち(You)です。YouTubeがもたらした社会現象がこの認識に大きく影響を与えています。


ソーシャル・キャピタル(Social capital、社会関係資本)

ソーシャル・キャピタル(社会関係資本) とは、「信頼・規範・ネットワーク」に裏付けられた社会的なつながり・絆、水平なネットワークの広がり」です。ソーシャル・キャピタル(社会関係資本) は、社会組織の特徴であり、人々の協調行動の基礎です。ソーシャル・キャピタルを活発にすることによって、社会の様々な問題を自主的に解決していくことが可能となり、社会的な効率性を改善することができます。ソーシャル・キャピタルの質と量は、地域再生の鍵となります。

ブログ、SNS(SNS (Social Networking Service)、YouTubeなどのCGM(Consumer Generated Media)は、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)を醸成し強化する有力なツールです。リアルなワークショップと同様に、住民や消費者が主体的に参加し、経験と情報を共有し、交互作用を通じて、コミュニケーションコラボレーションを促します。

神野直彦著『地域再生の経済学―豊かさを問い直す』(中央新書、2002年)では、

人間の能力は知識を交流させなければ高まらない。 そのため人間の能力を高めるには人間が相互に動機付け、相互に知識を与え合わなければならない。そこには人間の絆としての社会資本が決定的な意味をもつのである。人間の絆を強めれば、「知識社会」への転換を図り、経済の活性化も可能になると考えられている。

と述べています。

CGM(Consumer Generated Media)は、

  • 日常的な生活感覚に根ざした視点・経験は、共感を呼び起こし、ネットワークを通じて広がりやすい。口コミ効果とインターネットの相乗効果が働きます。
  • 経験・知識・問題意識・課題の共有は、互いに成長させ、協働行動を促します。
  • コミュニケーションコラボレーションの「」。

YouTubeの動画共有が切り拓く消費者発信の時代

YouTube - 『Time』誌の Best Inventions 2006

YouTube

YouTube

YouTubeは、最大100M、10分間を超えない映像を、「誰でもここからでも」投稿することができます。

YouTubeを使うメリット

  • コストをかけないで動画を配信することができること
  • 「サーチエンジン+ tag」で動画を検索することができること。動画に関心ある人に対して、情報を的確に届ける方法が確立されたといってよいと思います。
  • EmbedタグでブログやWebページに埋め込む方法を提供していること。いままでは特定なサイトに行かないとその動画を見ることができませんでしたが、自由にいろんなWebページに埋め込まれることによって、その動画を接する機会が一挙に広まっていきます。

YouTube革命 テレビ業界を震撼させる「動画共有」ビジネスのゆくえ』の中で、YouTubeで流行するクリップには、次の法則があると述べています。

  1. 誰でも少しの努力でまねできそうと思える
  2. 新しい表現方法に出会える
  3. 自分でもやってみたいと思わせる
  4. さらに知人に知らせたくなる
  5. 次々と同じことを始める人がでてくる

これは山川健一著『「書ける人」になるブログ文章教室』(ソフトバンク新書、2006年)の中で述べている「温かな無意識」と通じることがあります。

完璧な作品であるというよりも、構図はちょっと破綻していたり、いくつかの難点があるにしても何か温かなものを感じる。

つまり、それこそが「レット・イット・ビー」である。

その作品の中に完全には整理されていない無意識がある。

無意識であるが故に、冷徹無比な自意識に比べて温かい感じがする。

(中略)
「温かな無意識」が感じられる文学、写真、絵画、音楽というものが、都市生活ですさんだわれわれの魂を癒してくれる。何かホッとさせてくれるし、これはいいよなという磁場を持ちえるのだ。

また、しりあがり寿著『表現したい人のためのマンガ入門』(講談社現代新書、2006年)の中で述べている「時代の空気」と「ヘタウマ」と通じるものがあります。

「時代の空気」ともいうべき「ナニカ」がないと、モノは売れません。

(中略)
ヘタウマとコンピュータ-この二つの流れで、誰でもがイラストレータやデザイナーになれるようになったのです。もちろんヘタウマでもCGでもセンスやテクニックは必要です。でもそれまでと比べ、イラストレーターやデザイナーなど、プロへの敷居が大幅に低くなったことは否めません。

まさにYouの時代です。

YouTubeについては、『Time』誌の2006年12月25日号の記事「The Gurus of YouTube -How a couple of regular guys built a company that changed the way we see ourselves」で、創設者のSteve Chen(28才)とChad Hurley(29才)の生い立ち、会社設立の経緯、成功の理由などについて、詳しく紹介されています。私も始めてこの謎めいた二人について、イメージを持つことができました。

 

 

 

 

 

 

 

 

(写真:Time誌Webサイトからのリンク)

YouTubeは、また創業2年くらいの会社で、その課題や問題点を指摘するのは容易ですが、しかし「動画共有」が「いつでも、どこでも、誰でも」自由に使えるプラットフォームと、使いやすいインタフェースを提供したことは、やはり革命的です。

YouTubeが成功した理由

数多くの動画共有サイトがひしめく中で、YouTubeが成功した理由は、インターネットの本質である「ユーザ主導」、「best effort」と「good enough」にあるのではないかと思います。

cnet.comの記事「ユーチューブとGoogle Videoが明暗を分けた理由--グーグル幹部が明かす」 の中で、Googleの検索プロダクト&ユーザーエクスペリエンス担当バイスプレジデントであるMayer氏が

「YouTubeでは自分のビデオをすぐに見られる。成功の理由はそこだった」と語った。これとは対照的に、Google Videoに投稿したビデオは、審査を行って一般公開されるまでに2~4日かかっていた」

と述べています。

  • 優れたユーザ・エクスペリエンスの提供
    • アップロードした映像がその場で確認できる。
    • good enough的な画質(Flash Video、FLV形式)で妥協したことにより、素早い再生と映像ファイルの圧縮に成功。
    • 1動画が最大で「100MB、10分間」を制限したことにより、ファイル容量を制限し、殺到する投稿にも対応できたこと。
    • ユーザが投稿した短い素人ぽい映像は、かえって「温かい無意識」を喚起し、共感を呼ぶ起こしたこと。
    • 動画再生前の広告挿入の排除。待たせないですぐ動画を再生。
  • ユーザ参加型の仕組み
    • コメントとレスポンスによる双方向性コミュニケーション
    • Embedタグの提供で、他のブログやWebページに自由に埋め込めることができる
    • 「ユーザによる自由なtagづけ + サーチエンジン」で、好きな動画を見つける楽しみを与えたこと。
    • 著作権保護に対して寛容(事前審査ではなく、違反に対して事後削除で対応)

YouTubeのロゴも、レトロ風で一般ユーザにとって敷居が低く感じられたことも一つの要因であると『Time』誌が分析しています。まさに「時代の空気」をよく読みとっており、その業界のプロフェショナルでは、なかなか思いつかないアプローチではないかと思います。

 

ネットレイティングス株式会社 2007年3月22日の発表によると 、YouTubeの家庭からの利用者が1017万人となり、初めて1000万人の大台を超え、しかも最短の14ヶ月しかかかっていないと伝えています。

多くの利用者は、直接YouTubeのサイトに訪れるのではなく、ブログやSNSなどのCGM(Consumer Generated Media)に貼られた映像を経由しているといわれています。YouTubeの記録的な急成長はCGMの誘導力の強さを証しということができます。

2007年2月現在の日本の主なサイトの利用者は、下記のようになっています。

サイト名
1000万人到達所要月数
2007年2月利用者数
Yahoo! Japan
55ヶ月
3860万人
楽天市場
78ヶ月
2000万人
2ちゃんねる
77ヶ月
930万人
Amazon.co.jp (日本版)
42ヶ月
1750万人
ウィキペディア (日本版)
60ヶ月
1485万人
Google (日本版)
51ヶ月
1460万人
YouTube
14ヶ月
1017万人

その他のビデオの保存・共有サイト

ユーザにとって、使い切れない多くの選択肢がある時代です。


YouTube as a Community Media

YouTubeは、最大100M、10分間を超えない映像を投稿することができます。
地域内のお祭り、イベント、景観などの情報を動画で情報発信していく際に、有力なプラットフォームとして利用することができます。

私も3年前から、地域の中のお祭り、風景、スポーツ・講演会など様々なイベントを動画配信を試みてきました(http://www1.jiu.ac.jpを参照)。またNPOと協力して、千葉の幕張副都心の地域情報を発信する「幕張ドットTV」(http://www.makuhari.tv/)を運用しています。しかし、ネットワークに対する負荷や映像ファイルを保存するための大容量のハードディスクの制約もあって、誰でも使えるように公開するという発想をそもそも持っておりませんでした。現在でもハードルは高いと思います。

私が関心をもっているのは、YouTubeがブログのような「パーソナルメディア」やテレビに代わるもう一つのマスメディアとしての機能ではなく、「パーソナルとマスをつなぐコミュニティメディア」としての可能性です。

高度成長期の過程で、マスコミが発達し、地域内のメディアが崩壊していきます。地域内のコミュニケーションの基盤が崩壊し、「地域内の問題解決能力」が低下していきます。地域内の住・食・食・学・遊などの包括的な機能が崩壊し、中央を頼るようになります。

道路を作り、工場を誘致し、中央から予算を持ってくる、というように「外来的開発」を頼るようになります。

地域内の文化・歴史・景観・様々な出来事を映像化し、YouTubeに投稿し蓄積していけば、住民参加型のインターネットテレビができます。これらの映像を、様々なブログやWebサイトに自由に埋め込んでいければ、一挙に広まっていくのではないかと思います。(YouTubeのストレージがパンクしないのは不思議です!)

確かに地域内には、地域ポータルサイト、ブログ、フリーペーパーなどの様々なメディアがあります。しかし、映像をこれらと組み合わせることができれば、より効果的ではないかと思います。今後の日本をささえる地域の復活の契機は、地域メディアにあるとさえ思います。

年末から、神田 敏晶著『YouTube革命 テレビ業界を震撼させる「動画共有」ビジネスのゆくえ』(ソフトバンク新書、2006年)を手にとって読んでいます。この本は、地域からの視点が希薄で、ちょっと残念です。

しかし、「見せてあげる、聞かせてあげる、しかし使わせない」的なコンテンツ提供者側の論理に立つ著作権(私の表現)の転換の必要性について、力説している点には、非常に共感を覚えます。

またCGCM(Consumer Genarated Commercial Message、消費者作成CM)について、多くの最新の事例や可能性について述べたことは、非常に参考になりました。CGCMを通じて、YouTubeの可能性について十分に納得することができるのではないかと思います。

いずれにしても、i Media や YouMedia も面白いですが、WeMedia も重要であると思います。WeMediaは重要なことをきちんと伝えることが問題で、流行る必要は必ずしも必要がありません。


Sony の Bravia コマーシャルでみる「共有する広告」の可能性

ほぼ1年前のことですが、Sonyのテレビ Braviaのコマーシャル「Bouncy Balls」は、色がテーマであることを表現するために、25万個のカラーの弾むボールがサンフランシスコの街を転げ落ちる映像がネットで話題になっていました。

イギリスで放送されたこのCMがYouTubeに投稿されて、すでにネットで368万人の人によって閲覧されています。

上のCMの制作過程は、

BRAVIA-Advert.comの「Behind the Scenes」 http://www.bravia-advert.com/commercial/ 

でみることができます。映像を見るのにQuicktime 7 が必要です。

SONY Bravia

CMの中で流れている音楽「Heart Beats」も話題になり、Jose Gonzales氏のライブも見ることができます。

触発された新しい創作

このCMに触発されて、清涼飲料水のTANGO社は、カラーボールの代わりに、ミカン、レモン、りんごなどのフルーツを使ったCMを制作しました。


  チーズのDoritos社は、カラーボールの代わりに、大きいチーズでCMを制作しました。

いくつものパロディ映像が投稿されています。

 

 

SONYも、続編として建物からカラーのペンキが噴き上がるCMを制作しました。

スコットランドのグラスゴーでの、このCMを制作する風景も投稿されています。

CMに触発されて、類似のCMやパロディ映像がネットで話題になり、影響の輪が広がっていった様子がよく分かります。

YouTubeが提供する「映像の共有」よって、確かに新しい何かが生まれているのです。

新しい広告の胎動 -「見る広告」から「共有する・共に創る広告」へ

これからの広告は、見るだけではなく、このブログのようにユーザが自由に、自分のWebサイトやブログに張り付けられたり、それに触発されて新たな創作を誘発したりするような新たしい広告の形が広がるのではないかと思います。

SonyのBraviaのコマーシャルは、無断でYouTubeに投稿されて、最初からこのような広がりを想定していなかったと思います。図らずも新しい広告の可能性を示すものになりました。

YouTubeによって、確かに何かが変わったのです。


Wii のCGCM(Consumer Generated Commercial Message)

MySpaceの中のWiiのサイト http://www.myspace.com/howwiiplay

では、ユーザが作成したCMコンテストが行われています。

How Wii Play Viral Video Contest

Questions/comments/suggestions to en@jiu.ac.jp